新型コロナ感染症による社会的不安により、行き場を失った子ども若者のための精神的ケア及び居場所支援、および自立支援事業

団体名 一般社団法人 信州親子塾

都道府県 長野県

助成額 1,107,000円

活動開始日 2020/4/13

活動終了日 2021/5/31

助成金で行った活動の概要
4月、19歳女性がコロナ禍で県外のカウンセリングが打ち切りとなり、乖離、分裂等の精神症状が発出して家にいられなくなった。当初、家まで往復80キロを1日数往復(1ヶ月の総走行距離1500キロ)しながら対応し、夜はスタッフとともに車や塾のソファーで寝泊まりしていたが、疲労増加でホテルに一泊。しかし、一人では不安が強かったためスタッフの家に戻り、行きたい場所、食べたいもの等、彼女の要求に応える形で1ヶ月ほど対応した。その結果、当初の精神症状が消失し、現在は家に戻って自立に向けてアルバイトを始めている。家族のサポートは現在も継続中である。5月、コロナ禍で父親が在宅になったことをきっかけに、精神疾患を抱える22歳の青年が家出。マンスリーアパートで3ヶ月間一人暮らしする中で自立への決意が固まり、障害者年金の範囲で自分でアパートを借りて一人暮らしをするに至った。現在は親子塾で子どもとの関わりを学んでおり、精神科受診の必要もなくなった。今年に入ると20〜30代への対応が相次いだ。一人は東京での仕事がコロナ禍により危うくなり、長野に帰省。実家にいると仕事とお金の不安が強いため、マンスリーアパートで一人になって自分自身と向き合う時間を1ヶ月確保しながら対応してきた。3月に東京からの引っ越しを終え、再び3ヶ月マンスリーアパートを借りて一人暮らししながら、親子塾で自己理解を深めていく。短大2年の女性は、リモート授業で家にいることが増え、ストレスが溜まっていた上に教育実習がコロナ禍で中止になってパニックになり、就職に対しても不安と絶望しかなかった。親子塾に毎日通いたくても自宅が50キロ離れているため、2月の採用実習までの1ヶ月間、親子塾の近くにアパートを借り、その間親子塾に毎日通って自分自身のあり方と向き合った結果、採用実習もこれまでにない手応えで問題なく終え、無事に短大を卒業。保育士として4月から働く。軽度の障害を持つ20代女性は、在宅が増えた父親との関係が悪化したため、1週間ほどアパートに避難対応した。初めて一人暮らしができたことに自信がつき、何かあってもなんとかなる安心感から、家でも落ち着いていられるようになった。さらにPCの購入により、家に戻った人へのオンライン相談、当事者を抱える親をサポートするためのオンラインセミナーを実施できるようになり、フォローアップ体制も整った。             

活動日数 320日

支援対象者実人数 30人

支援対象者延べ人数 856人

参加ボランティア実人数 2人

参加ボランティア延べ人数 260人

本助成金による活動の成果
コロナ禍による社会情勢の変化により絶望し、5月に20歳の誕生日を迎えるつもりがなかった女性が、助成金で交通費や食費をご支援いただけたことで、行きたいところに行く、食べたいものを食べる、といったこれまでやれなかった体験を存分にできた。これまで満たされなかった自分が、人から100%受容されたことで、「初めて自分をわかってくれる人に会えました」という思いになり、無事に誕生日を迎えて新たに自分の命を使って今後どう生きるかを考え始めるに至った。また、助成金でマンスリーアパートを用意させていただいたことで、悪化した家族関係からの緊急避難や、往来を規制されている地域からの避難等、必要なタイミングで親子塾を利用できる状況を作ることができた。そのタイミングを逃さないことは、引きこもりや精神障害を抱える若者の自立に必要不可欠なことであり、少なくとも、これまで依存的で福祉や医療と切り離せなかった若者3名を、引きこもりから救うことができた。以上のように、私たちが個々のケースに対応する際に、お金の心配なく対応することができたこと、緊急のシェルター始め資金的な援助を受けられたことは、支援活動に対する安心感だけでなく、生きづらさを抱えた子ども若者が自立へに踏み出す手助けとなり、数名の自死を防ぐことにもつながった。               

事業を実施する中で見えてきた課題と今後の取り組み
今回コロナ禍による社会情勢の変化に敏感に反応して集まってきた20代〜30代の若者は、HSCといわれる「敏感すぎる、感性の高い」若者であった。彼らはコロナ禍の変化だけでなく、これまでも「自分の生きる場所はない」と感じるほどに、世の中の枠組みに順応することに苦しんできた様子がうかがえる。コロナ禍休校明けに集まってきた小・中学生も全てHSCであり、2割といわれる彼らに対して社会の理解や対応の遅れが顕在化した。私たちはその存在を教員生活の中で肌で感じてきており、その実践の中でHSCと向き合い対応してきた長年の経験が、今回彼らの居場所となり、新たな人生を生き始める結果につながっている。その支援の精度は、一朝一夕に培われるものではなく、ただ居場所のみを作ればいいというものでもない。支援できる人材を育成することが急務であると感じる。さらに、経済的な問題も大きい。学齢期においては義務教育でお金がかからない中、不登校という現れ方をしているHSCの子供に、私立学校並みの学費を払うことに抵抗を感じる親がほとんどで、家でこもりがちになっている実態がある。早めに手を打つことで引きこもりや精神障害となることを防げることは確かなだけにもどかしさを感じる。また、HSCから引きこもりや精神障害に至ってしまった青年期以降の若者についても、これまで本人の更生のため塾や予備校などに投資してきたり、親が老齢化したりで、経済状況が逼迫しており、今回のような助成がなければ諦めるケースも相次いでいる。私たちだけの力でどうにかなるものでもなく、これらの状況を発信しながら、理解者や支援者を広げていく責務があると感じる。        

助成決定した活動を報告したSNSやホームページのURL
https://shigotoya-manabiya.wixsite.com/oyakojuku/赤い羽根助成金
https://www.facebook.com/101792041442238/posts/154343372853771/?extid=0&d=n