新型コロナウイルスの影響による帰国困難者のための生活支援事業

団体名 多文化共生リソースセンター東海

都道府県 愛知県

助成額 1,893,514円

活動開始日 2020/6/1

活動終了日 2020/11/30

助成金で行った活動の概要
本事業は、新型コロナウイルスの影響で帰国困難となり、一時的な受入れ施設として禅寺・相生山徳林寺(名古屋市天白区)に身を寄せている在日外国人を対象に、彼・彼女らが無事に帰国するまでの間、医・食・住の提供を中心に、生活に必要な環境を整備するとともに、滞在期間の生活相談や各種情報提供、心理的ケア等を行うことを目的とした。これにより、学校や職場を離れ住居(寮)と収入源を失った人々が、帰国までの間に路上生活を余儀なくされたり、生活困窮に陥ったりすることのないよう支援を行なった。 2020年3月、在東海ベトナム人協会及び在名古屋ベトナム社会主義共和国名誉領事館からの依頼を受け、翌4月中旬より徳林寺での帰国困難者受け入れが開始された。住居と食材の提供を中心に、日常生活のケアを徳林寺が行った。入居者は常時マスクやフェイスシールドを着用し、起床後と昼食後に体温を計測し、日に何度も手指をアルコール消毒した。また、月に1回の名古屋出入国在留管理局への移動はボランティアが自家用車で送迎し、それ以外は寺の境内から出ることを禁じるなど、外部との接触が必要最低限となるよう留意し、新型コロナウイルスへの感染防止に努めた。食事は当番制で自炊するなど極力自活に努めるとともに、境内の清掃や修繕など、寺への貢献も行なった。 入居者の面接や生活指導、大使館や母国の家族等との連絡調整を在東海ベトナム人協会が担った。また、5月下旬ごろから帰国の見通しが立たない状況下でストレス過多により鬱状態になる者もあったことから、寺の関係者と相談し、映画の上映会やミニ運動会など、レクリエーションの企画・運営も行なった。 当団体は、5月の大型連休以降に支援活動に加わり、外部団体による生活支援金の申請や元の職場での未払い賃金について労働基準監督署への申告、帰国費用支払いの交渉、帰国後の年金脱退一時金申請に必要な住民票の郵送申請、新たな在留資格への変更等といった行政手続きを行うとともに、徳林寺滞在中の生活物資や医薬品等の調達、さらには愛知県や在名古屋出入国在留管理庁等公的機関への支援拡充要請等を担当した。生活物資の購入は、外部との接触を避けるため極力インターネットを通じて行い、急ぎのものなどはボランティアが自家用車で近所のスーパーマーケット等に買い物に出かけた。 こうした役割分担がうまく機能し、関係者への負担が偏ることなく活動を継続することができた。

活動日数 183日

支援対象者実人数 117人

支援対象者延べ人数 7,000人

参加ボランティア実人数 5人

参加ボランティア延べ人数 360人

本助成金による活動の成果
本助成金の活用期間である2020年6月〜11月の6か月間の支援対象者は約120名、国籍はベトナム・スリランカ・ネパールの3か国であった。当初、最大で30名の受け入れを予定していたが、新型コロナウイルス感染症の影響が長引くにつれ入居希望者が増え、6月下旬のピーク時には60名が滞在した。一方で、6月9日にベトナム政府の緊急チャーター便(成田空港発)による帰国者第1号が出て以降、月に1〜4便のチャーター便に少しずつ搭乗することができ無事に帰国の途に着く者もあった。しかし、ベトナム大使館によれば緊急帰国便への搭乗希望者は2万人程度あるらしく、一回の飛行機に登場できるのは300名程度であったことからなかなか抽選に当たることはなく、4月の受け入れ以降もっとも長い人で帰国までに6か月もの時間を要した。 本助成金を得て帰国待機中の生活環境を改善できたことにより、11月末までに帰国した117名全員が新型コロナウイルスへの感染はもとより、体調を大きく崩すこともなく、大きな怪我もなく、無事に帰国することができた。帰国前には支援対象者から感謝の手紙が寄せられ、帰国後にはSNSを通じて無事な様子も送られてきた。ひとえに、本助成金があってのことと心から感謝する次第である。         

事業を実施する中で見えてきた課題と今後の取り組み
本事業で支援対象となった外国人労働者と留学生の多くは、元は会社または学校の寮で生活していた。しかし、3月下旬から新型コロナウイルスの影響で職を失ったり、学校を卒業したりしたことで、寮を追い出され住居を失ってしまった。新たに外国人が民間のアパート等を借りる際には、多くの場合、日本人の連帯保証人が必要であったり、数ヶ月分の敷金・礼金が必要であったりする。また、仮にそれが自身で用意できる場合でも、家探しから契約、ガスや電気の開設など複雑な手続きをすべて日本語で行わなければならず、それらが結果的に新たな住居を確保することを困難にさせている。つまり実質的に、日本人支援者の協力がなければ生活を再開できない環境下にあるのが、日本で暮らす外国人に共通する課題であることを感じた。また、徳林寺に入居した者の約9割が、職場や学校を離れてから在留期限が切れてしまい、オーバーステイ(超過滞在)となっていた。そのため、特別定額給付金や生活貸付金、住居確保給付金等各種公的サービスの対象外となっているため、民間の支援だけが命と人権を守うえでのセーフティネットとなっていることも、今後さらに外国人を受け入れようとしている日本社会の大きな課題である。本事業を通じて、いざというときに命と人権が守られる社会づくりに向けて、政府や自治体、経済界、一般市民などに広く改善の必要性を訴えていきたい。

助成決定した活動を報告したSNSやホームページのURL
https://note.com/mrct