児童自立支援施設に暮らす生活に困難がある子どものための、プロの芸術家による表現ワークショップを通じた自立支援事業

団体名 特定非営利活動法人 芸術家と子どもたち

都道府県 東京都

助成額 1,000,000円

活動開始日 2024/4/1

活動終了日 2025/3/31

助成金で行った活動の概要
首都圏の児童自立支援施設2カ所(埼玉学園・国立武蔵野学院)にプロの現代アーティストを派遣し、施設の職員と協力しながら、困難を抱える子どもたちを対象としたワークショップを継続的に実施することで、子どもたちの表現力、創造力、自己肯定感やコミュニケーション能力の育成を図った。
ワークショップ実施前には、施設職員と事務局スタッフ、アーティストの三者による打合せを設け、施設の要望や参加する子どもたちの実態をヒアリングしたうえで実施内容を検討した。

国立武蔵野学園では、夏期に涼しい場所で運動とは違うリラックスして身体を使うような活動の希望があり、振付家・ダンサーの鈴木ユキオ氏を起用。入所中の全員を対象に、男女別で各グループ11~15人前後の計3グループに分けて2日にわたるワークショップを行った。
ワークショップでは、二人組で相手の動きについてくワークや、新聞の形や動きを身体で表すワーク、グループで取り組むワークなどを実施。決まった動きを覚えるのではなく、誰かと一緒に取り組むことで自分では普段やらないような動きが引き出されることや、言葉を使わず身体でのコミュニケーションを楽しむようなワークを取り入れて、他者と協働して表現することを経験できるようにした。

国立武蔵野学院では、普段の授業では楽器にふれる機会が少ないということで、たくさんの楽器にふれる内容を検討。打楽器奏者の関根真理氏を起用して、入所中の全員を対象に3回のワークショップを実施。
初回は、アーティストが用意した打楽器のほか、学園のドラムなども借りて、まずは子どもたちに楽器の楽しさを体験してもらった。2回目は、打楽器でもジャンベ、カウベルなどいくつかのパートに分けて「クク」という西アフリカのリズム・アンサンブルに挑戦。後半は各々が取り組みたい楽器に分かれてリズム演奏や、イメージに合わせた即興演奏などに取り組んだ。ギター、ドラム、打楽器の3チームができ、3回目は全員で演奏する「クク」のリズムアンサンブルに、ギター、ドラム、打楽器チームの演奏コーナーを加えて、一つのお祭りのように構成して合奏。相手の音を聞きながらリズムを合わせたり、他チームの演奏に耳を傾けたりしながら、全員の音楽が重なり合う心地よさを感じる時間になった。
また、いずれの施設もアシスタント・アーティストを2名ずつ起用、一人ひとりの子どもたちに丁寧に関われる体制で臨んだ。

活動日数 5日

支援対象者実人数 65人

支援対象者延べ人数 147人

参加ボランティア実人数 0人

参加ボランティア延べ人数 0人

本助成金による活動の成果
児童自立支援施設では、普段から野球やバレーなどの競技系の運動や、体力向上のためのマラソンなどの取り組みは多い様子が伺えたが、授業の中でも、文化芸術に関わる経験については、施設内の職員や時間だけで取り組むには限界があるように感じた。

そして今回ワークショップを実施したことで、職員からは「集団生活が苦手な子が、生き生きと参加しているのが印象的でした」「笑顔で活動をすることで、より身体が動くことが分かったような発言があった」「帰寮後の会話から、子どもたちがいろいろと刺激を受け、感じた様子が見てとれました」「楽器に触れる貴重な経験だけではなく、全体で一つの作品をつくり上げていく過程と、その出来映えが本当に素晴らしかったです」「今後もいろいろな芸術にふれる機会をつくりたいと思います。言葉や行動だけではない、いろいろな自己表現方法を学んで欲しいと思っています。とても良い機会をいただきました」などの意見が実施後アンケートに寄せられた。

また、子どもたちからは「言葉ではなく、身体で自分の気持ちや考えを表すというのがとても楽しかったです」「3回目、できるか分かりませんが会えたら、一緒にまた踊りたいです」「音楽はあるけれど、リズムに合わせるたりすることなく自由に踊れることが印象に残っています」「音やリズムに合わせるだけではなく、目や手で、感じることで、全身で楽しむことができました」「一人ひとり“自分らしさ”を身体で表現していて、他の人を見るのも面白いと思いました」「寮生や先生方と一緒に音でコミュニケーションを取ったり、リズムに乗って演奏などを行ったことが楽しかったです」「ミスしても失敗してもいいということを、先生方から学べて、自由にやる時、何かを表現する時は、正解はないんだということを知る機会になったと思います」などの感想があった。

こうした意見や感想から、児童自立支援施設において、子どもたちにいつもとは違った多様な体験の機会を提供することができ、その中で自分を表現する力や、他者とコミュニケーションを取りながらダンスや音楽を創造する力、他者の表現を認めると同時に、自分の表現を肯定的に受け止める力などが培われたと考えている。

事業を実施する中で見えてきた課題と今後の取り組み
児童自立支援施設では、通常の授業やに加えて、クラブ活動や体育的な活動、行事等も年間を通してしっかり計画が組まれており、その中で、ワークショップを実施する時間をつくるということは、両施設とも調整が必要な様子だった。しかし、他の行事があまりない時期がいくつかあることや、実施のペースを1ヵ月に1回程度にすること、夏休みや祝日の時間を利用することなど、施設ごとの事情や取り組みやすい時期、時間があることなども見えてきたので、継続する際には、施設の状況に応じて、実施する時期やグループの分け方など、引き続き施設職員と連携しながら個々の施設に合わせて柔軟に実施計画を立てることが大切だと実感した。
初めてワークショップを実施する時には職員の方々も不安そうな時もあるが、子どもたちと一緒にワークショップに参加してもらい、生活の中でも子どもたちが「楽しかった」と話してくれたり、ワークショップを楽しみにしている様子を感じ取ってくれ、回を重ねるごとに職員の方の理解も深まったと感じてる。
また、音楽のワークショップでは、元々施設にはあったがあまり活用されていない楽器(ドラムやギター)を今回をきっかけに、職員の方も再び使用する機会を増やせたらという想いが芽生えたようで、楽器ができる職員の方が積極的にワークショップに参加して子どもたちのサポートをしてくれたり、アーティストと相談して、楽器に日常的に振れやすくなるようにメンテナンスに必要な備品も用意したので、施設の中で文化芸術分野の活動がより身 近になったのではないかと考えている。
表現活動において、成果を数値で図ることは難しい面もあるが、今後実際に体験した職員や施設以外にも活動を広げていけるよう、今回WEBサイトでワークショップレポートを掲載したように、広報活動も引き続き力を入れいて、活動への支援、理解者を増やすとともに、新規施設へのアプローチも行いたい。

助成決定した活動を報告したSNSやホームページのURL
https://www.children-art.net/staffblog/archives/4227
https://www.children-art.net/staffblog/archives/4350



寄付してくれた人へのメッセージ
皆様にご支援いただいたおかげで、たくさんの子どもたちにダンスや音楽など、いろいろな芸術にふれる機会をつくることができました。子どもたちは一人ひとり、興味関心や、物事の捉え方、感じ方が異なりますが、施設により異なるジャンルのアーティストを起用し、アシスタント・アーティストもふくめて、丁寧に子どもたちに関わる体制を組んで臨めたことも効果的だったと思います。
皆様のご支援のおかげで、丁寧に体制や環境を整えたうえで、ワークショップの体験を届けることができたこと、心より感謝申し上げます。