都道府県 東京都
助成額 1,260,000円
活動開始日 2024/1/11
活動終了日 2024/12/31
助成金で行った活動の概要
大規模震災からの復旧・復興は、「失ったマイナスを取り戻す」過程が続く。復旧・復興のペースが上がらず苦しむ能登半島では、特に辛い過程といえるかもしれない。本研究会は、代表が所属する駒澤大学が大本山總持寺と縁が深いこと、主力メンバーが東日本大震災の支援経験者であることから、発災直後に輪島市門前町に入り、現地のシャンティ国際ボランティア会や災害支援NPOありんこなどと連携して、「マイナスを取り戻す」手伝いをしてきた。一方で、被災された方の多くが70?80代のお年寄りで、壊れた自宅や街並みの中で「失ったマイナス」ばかりに直面していた。同じように、地域の子どもたちも、傷んだ街で避難生活を続けており、なかなか自らの居場所を見つけられず、また遊び場も失っていた。そのような高齢者と子どもたちにとって、地震により大切なものを失った経験だけではなく、今だからこそ何かを得る経験を重ね、そこに「被災したからこそ得るもの=プラス」を加えようとする支援が不可欠である。一方で、申請者らは東日本大震災で、仮設住宅の集会場で「初心者向けパソコン教室」を無料で開催し「被災して失うばかりだったが、新しいことができるようになった」と好評を得た実績があった(http://www.showado-kyoto.jp/book/b165567.html)。仮設住宅に入居されてから、集会場など公共スペースで集まる企画を開催し、継続することができるか、そして、子どもたちにとって門前町が居場所を作ってあげることができるかが、コミュニティの解体や孤立化を防ぐ土台となる。地域の方のなかには、被災してからこれまで、地域で支え合い協力してきた歴史をデジカメで撮影し、アルバムに残したり、これまでのコミュニティを継続しようと、パソコンを使って地域の方向けの資料を作成しようとしている方など、今だからこそコミュニティを維持・継続しようとしている方に何度もお会いした。そこで、「できるようになった」という「+」を加えるとともに、コミュニティの維持を図ることを目的とし、輪島市門前町の避難所や地域の公民館・集会所、仮設住宅の集会所にて無料の「パソコン・スマホ・デジカメ教室」を定期的に開催し、何かができるようになる支援を実現させてきた。
活動日数 39日
支援対象者実人数 52人
支援対象者延べ人数 91人
参加ボランティア実人数 38人
参加ボランティア延べ人数 45人
本助成金による活動の成果
門前町はそもそも情報インフラが不十分な中で被災したことで、ネット環境などで大きなハンデを背負いつづけることとなった。私たちは東日本大震災時でも、類似の環境の中で「パソコン・スマホ教室」を開催してきた経験があり、そのノウハウから段階的に準備してきたが、それでも1月、9月と被災が繰り返された下では、困難な道のりの中で、少しずつ成果を重ねるものであった。
1)使用環境整備とパソコン・スマホに関する相談受付対応
2024年当初、避難生活が続く中で門前町の中では、パソコンやスマホなどを安定的に並べて教室を行えるような場所そのものがなかった。一方で、地元の方から「被災した自宅のパソコンやSDカードを見て欲しい」「スターリンクが来たけど繋がらない」「携帯が浸水して新しいスマホになったので教えて欲しい」などのご要望が多く寄せられた。また、これから各地でパソコン教室を開催するために、埃っぽくない通電している場所があるか、Wifiの電波は受信できるかなど、確認しなければならないことが山積していた。そのため2024春?夏にかけては、地域を巡わって予備的にパソコンやスマホに関する相談を受け付け対応する支援を行うと共に、近隣地の教室環境やネット環境を確認し、接続環境を構築する支援をおこなった。これらの作業は、全地域目処がつく目前で9月水害に見舞われてしまい、その支援の必要から2024年11月ごろまで続くこととなった。
2)子ども向けパソコン・スマホ・デジカメ教室の開催
最初に環境が整った道下地域には子どもたちがいたため、拠点を持つ災害支援NPOありんこ等と連携し、パソコン・スマホの教室を開催した。自分たちの町について知るため生成AI(chatGPTなど)を利用し、リテラシーについて学んだ。また国土地理院の地図サイトで、自分の地域について見てみるなどができた。
3)高齢者向けパソコン・スマホ・デジカメ教室の開催
高齢者向けの教室では、東日本大震災でのパソコン教室の実績をもとに、住所変更のお知らせや年賀状等を扱った。またニーズに合わせ、発災以後の地域や人の支え合いをデジカメで撮影したアルバム作成や、自治会のお知らせや報告書を作成するためのエクセル・ワードの使い方などを開催した。スマホでのQRコードの読み取り方、SNSの使い方等も実施することができた。
事業を実施する中で見えてきた課題と今後の取り組み
本活動は、東日本大震災時の支援活動の経験から生まれた。当初は地元のニーズにあわせつつも、東日本の頃に必要だったノートパソコン、スマートフォン型のタブレットなどを予算申請し準備をする計画であった。しかし事前のパソコン・ネットに関する相談の応対、さらに各地のネット環境調査などを進めていく中で、「東北に増してご高齢の方が多く、そのなかでパソコンを習いたい人はすでに自前のものを持っている」、「スマホも東北当時と比べ普及率が高く、多くの方は自分のスマホを持っているが、使いこなせていない」などハード面のニーズは少なく、むしろ「自分の所有しているパソコンやスマホが使いこなせない」という状態であることがわかった。そこで避難所、公民館、さらには被災したご自宅などに出向いて、パソコン・スマホに関する様々な相談を受け付け「映像・写真が保存されているはずのデジカメやメモリが見つからない、写らない」、「仮設住宅に引っ越したがパソコンがネットにつながらない」「地震で買い換え新品になったスマホの、使い方がわからない」といった質問に丁寧に対応することとなった。並行して会場の電気および機材の状況、ネット・wifiの確認も、何度も必要だった。特に2024年前半から9月水害に至るまで、門前町各地の公民館も繰り返し避難所になり、雨漏りして代替施設になったり、山間部でwifiが繋がりにくいところも多かったため、少数だが一式のネットワーク、パソコン、携帯型プリンタなどを仮設住宅の集会所などに持ち込んで、「個別指導」のようにみなさんの疑問点に答えていく、というスタイルのパソコン・スマホ・デジカメ教室を、地域のニーズにあわせて実施する=「能登モデル」を構築することになった。ニーズ別に分かれ、時間も厳密には決めず質問が終わるまで教える形で、 (2)子ども向けパソコン教室、(3)高齢者向けパソコン教室とも、高齢化が進みニーズが細分化された地元の現状にあわせる「能登モデル」として実施していくこととなり、それが2025年の「初心者のための「デジタル・パソコン・スマホなんでも相談会」に繋がっている。石川県は復興のDX化を推進しており、今後ますますネットで流れる情報も増えていく。現地の高齢の方を「情報弱者」として置き去りにしないためには、「能登モデル」の応用を図る私たちの活動が不可欠であり、本格的な定期開催を目指している。
助成決定した活動を報告したSNSやホームページのURL
https://monzen.learningcrisis.net/
寄付してくれた人へのメッセージ
Learning Crisis研究会は、2024年1月の地震、そして9月の豪雨により被災した、石川県輪島市門前町にて本活動を実施・継続させていただきました。地域の方が失ったものは非常に大きいが、少しでも「できる」ことを増やすお手伝いをさせていただくことができたことは、まさにみなさまのご厚志のおかげです。深くお礼申し上げます。本活動は、デジタルに強い大学生を派遣し、地域の方のデジタル機器に関するお悩みやご相談にお答えする活動ですが、その特徴は2つあります。ひとつは、単なる「デジタル機器お悩み相談」ではなく、地域の方がいかに門前町の自らが生まれ育った地域のことを思っていらっしゃるかを伺い、学生とともに学ぶ機会にできた点です。門前の方々の思いに触れ、多くのものが失われたからこそ、デジタル機器によって「できる」ことを増やすことを目標とした本活動は、非常に意義のある活動となったと思われます。もうひとつは、地域の方々にとってなかなか使いこなすことのできないデジタル機器を、誰かと連絡をとったり、インターネットにアクセスして情報を得たりなど、これからの地域や家のことを考え、生活の復旧や地域の復興に向けて動こうとされているところに寄り添う姿勢を貫くことができた点です。そのような地域の方々からのご質問やご相談にお答えするという姿勢は、単なるパソコン教室ではなく、少数だが一式揃った機材パッケージと共に個別指導形式という「能登モデル」に結実させることができました。ささやかで微力ではありますが、これからに向けた情報収集や、コミュニティの維持・継続に貢献することができたのではないかと考えております。
「DXによる復興」といっても、それがご高齢の方や子どもたちを「新たな情報弱者」としてしまっては意味がありません。本研究会は、今後も、門前町におけるデジタル機器に関する相談会を継続開催させていただく予定です。被災地において、少しでも地域の方の「できる」を増やし、地域の復旧・復興に向けたお手伝いができれば幸いです。改めて、この度のご寄付・ご助成に厚くお礼申し上げます。