被災自治体と連携してアレルギー患者の生活を支える事業

団体名 特定非営利活動法人NPO法人アレルギーを考える母の会

都道府県 神奈川県

助成額 450,000円

活動開始日 2024/1/5

活動終了日 2024/3/31

助成金で行った活動の概要
助成期間内に能登半島地震の被災地域を3回訪問し6日間活動した。活動開始に際し石川県庁に設置された保健医療調整本部と連絡を取ったところ「患者支援の申し出は大変にありがたい。ニーズが高まるのはもう少し時間がたってからではないか」(担当医師)とのことだった。発災2週間後の1月15日(月)、七尾市を訪れ被災者の健康を守る取り組みを担う市役所の健康推進課で情報交換と打ち合わせを行った後、矢田郷地区コミュニティセンターなど避難所7カ所で、アレルギー患者を支える体制づくりや相談窓口の案内、患者対応を行った。避難所で食事を提供しているボランティアグループとも交流し、食物アレルギー患者が食べられるか判断できるよう食事の原材料の表示を行うよう要請した。  その後、「ボラサポ」による資金確保ができたことから、3月14日(木)と15日(金)、穴水町、能登町、珠洲市、志賀町、輪島市を訪れ、被災者の健康を守る行政の担当部門や避難所に、長引く避難生活の中でアレルギー疾患の悪化を招かない取り組みに役立つ資材を提供した。訪問先では石川県健康福祉部少子化対策監室の母子保健グループリーダーや、当会の地元・横浜市などから派遣されている保健師チーム、日本栄養士会の災害支援チーム(JDA-DAT)などと情報を交換した。  3月26日(火)と27日(水)、中能登町、七尾市、志賀町、穴水町、能登町、珠洲市、輪島市を訪れ、被災者の健康を守る行政の担当部門や避難所などでアレルギー患者支援に役立つ資材などを提供、避難の実情に合わせた取り組みについて現場の担当者とともに考えた。この中では必要な支援が時間の経過とともに変化し、食物アレルギー対応から長く続いた断水などの影響で赤ちゃんの皮膚トラブルが問題になってきていることが指摘された。各地の避難所ではアレルギー患者と会うこともできた。 翌28日(木)に石川県庁の健康福祉部少子化対策監室母子保健グループとアレルギー疾患対策の担当課である健康福祉部健康推進課を訪問し、現地での活動を踏まえて必要な取り組みについて意見を交換した。

活動日数 6日

支援対象者実人数 31人

支援対象者延べ人数 51人

参加ボランティア実人数 4人

参加ボランティア延べ人数 6人

本助成金による活動の成果
災害時のアレルギー患者支援については、当会も策定に関わった「避難所における良好な生活環境の確保に向けた取組指針」(内閣府防災担当、平成25年8月、同28年4月改定)に示されている。(1)食物アレルギー対応食品の備蓄と適切な配布、(2)食物アレルギー患者が判断できるようにする、避難所で提供する食事の原材料表示を示した包装や食材料を示した献立表の掲示、(3)アトピー性皮膚炎患者や喘息患者に配慮したシャワーなど施設の優先使用や避難場所の配慮が求められる。ただこうした取り組みが混乱と多忙を極める状況の中では行われるのが難しいことを、東日本大震災以降の災害で経験してきた。  当会は被災自治体の保健部門等が主体的に動いてもらうための「情報のプッシュ型支援」が重要と考え、3市4町の保健部門と避難所に情報と資材を届け、支援の体制づくりに協力した。併せて当事者である患者を支援する活動を行った。この中では必要な支援が時間の経過とともに変化し、食物アレルギー対応から長く続く断水などの影響で赤ちゃんの皮膚トラブルが問題になってきている状況が共有され、変化に対応した当会の協力に「たくさんの資材がありがたい。保健師、栄養士など母子保健担当で共有し活用したい」(町保健センターの助産師)、「再開しつつある健診などの際に資料を活用したい」「非常に助かる。次なる災害を不安に思っている人が多い。長期間水がなくて皮膚トラブルに見舞われる子も増えている。大いに活用させてもらう」(市の管理栄養士)などの声が寄せられた。 被災自治体ではアセスメントシートでアレルギー患者を把握する共通の取り組みが行われていた。県等により一定の方針が事前に示されていたと考えられたため、石川県健康福祉部少子化対策監室母子保健グループなどとも連携した。被災地域の保健師や栄養士など専門職を支援する研修会の開催などで、必要に応じて連携することにしている。

事業を実施する中で見えてきた課題と今後の取り組み
協力はお互いに信頼できる相手であることが理解できて成り立つことを考えれば、被災した自治体を初めて訪ねて連携を始めることは、そう容易ではないと考える。訪問先の自治体にしても、初めて訪ねてきたNPOと情報交換、協力を行うことに躊躇(ちゅうちょ)するのは当然だと考える。当会がこれまで活動してきた東日本大震災以降の被災地でも、まず信用できる相手であることを認めてもらえることから取り組んできた。  その点について、当会がここ数年、厚生労働省の後援を得て全国を対象に行ってきたオンライン研修会に被災自治体からも多く参加していたこと、当会が国のアレルギー疾患の中心拠点施設である国立成育医療研究センターアレルギー・センター長の監修を得て作成した各種の啓発資材が県を通じて全市町村に配布され事前に認知されていたことが、能登半島地震の被災自治体との比較的早い円滑な連携につながったと感じる。同様に県健康福祉部少子化対策監室母子保健グループとアレルギー疾患対策の担当課である健康福祉部健康推進課との連携も始まった。  こうした県、市町との連携、当会が築いてきたアレルギー専門医とのネットワークを生かして被災自治体の保健師や栄養士などへの協力、個別の患者支援を続けるとともに、令和6年中にも県、被災市町と調整し、国立成育医療研究センターアレルギー等のアレルギー専門医を同行し、現地で直接参加とオンラインでも参加できる専門職のための研修会、質問会を開催して対応能力の向上を支援、これを通じた患者支援の充実を進めたい。

助成決定した活動を報告したSNSやホームページのURL
http://hahanokai.org/



寄付してくれた人へのメッセージ
被災地支援の活動には被災した家屋の撤去や片付け、物を届ける支援、炊き出し支援など見えやすく理解しやすい活動のほかに、環境の激変で持病が急速に悪化する患者への支援や、長引く避難生活で悪化してくる慢性疾患患者を支える活動があると思います。ぜん息やアトピー性皮膚炎、食物アレルギーなどアレルギー疾患は平時であれば適切な医療と自己管理を基本に良好な状態を保っていくことができますが、災害時に自己管理が難しい環境に追い込まれ症状を悪化させていくケースが多くあります。慢性疾患といっても決して侮ることはできず、ぜん息や食物アレルギーでは時に命にかかわる状況に陥ることもあります。一方、当会が活動してきたこれまでの被災地では、慢性疾患の患者は「自分たちよりもっと困っている人がいる」と声を上げない人がたくさんいました。そこで当会は、「声を上げないけれども困っている人がいる」ことを、被災者の健康を守る現地の行政、中でも保健師や栄養士などにしっかりと認識してもらい、国の指針などに基づいて適切な支援が行われる体制づくりに協力する、併せて患者個人を支援する活動に取り組んできました。能登半島地震の被災自治体では行政の対応も向上しつつあることを実感しています。このよう見えにくい支援に理解を得て助成を得るのも、またかなり難しいと感じています。こうした活動をご理解いただき、貴重な助成をいただいたことに感謝いたします。