都道府県 東京都
助成額 3,000,000円
活動開始日 2024/2/15
活動終了日 2024/5/31
助成金で行った活動の概要
元日の能登半島地震で甚大な家屋被害を受けた石川県輪島市門前町を中心に、住まいを専門とする支援団体として、住宅の再建をはじめ、生活基盤を整える上で欠かせない住環境整備に注力した取り組みを実施した。輪島市門前町は、2006年に輪島市と合併した町であり、2007年に発生した能登半島地震では、門前町の一部の地区で全世帯の3分の1以上にあたる家屋が全壊の被害を受けた。門前町は、町の象徴でもある総持寺寺院の再建と共に、この17年間復興に向けて歩んできた。そうした中で発生した元日の地震は、前回の地震を上回る深刻な家屋被害、さらには道路や水といったインフラを破壊した。震災直後は住民の半数以上が避難所に身を寄せる中で、人・モノ・情報が足りず混乱が見られた。そこで、ハビタット・ジャパンは門前町に拠点を置き、被災者支援を開始した。
震災から一ヶ月は、「いのちを守る活動」に注力した。本事業の助成が開始された2月中旬からは、ハビタットのミッションである「手を取りあい、家、コミュニティ、そして希望を築く」活動を実践するために、「住宅の再建に向けた活動」に軸足を移し、3つの事業を展開した。一つが、被災家屋の片付けである。片付けニーズに対応することで、避難されている方が一日も早く元の家に戻れるよう、また新しい生活をスタートできるようサポートした。二つ目が、避難所や仮設住宅など、そこに住まう人にとっては一時的でも心身を休め、明日への活力を養う場が少しでも安心、安全に過ごせる場となるよう、棚作りを通じた居住環境改善事業を展開した。そして、三つ目が、住宅再建に関する相談事業の展開である。被災され方の中には、被災家屋の応急危険度判定や罹災証明書の判定に戸惑い、今ある住まいを解体すべきか、修繕できるかその判断がつかずに不安を抱えている。そうした不安を少しでも取り除き、住宅の再建にあたって選択肢が広く持てるよう、建築士と連携した相談事業を展開した。家屋片付け、そして棚作りにおいては、ハビタット・ジャパンが持つ学生団体におけるネットワークを中心に、ボランティアに呼びかけを行い、現地に動員することで、一世帯でも多くの方が一日も早く安心、安全に暮らせる場所を取り戻せるよう支援にあたった。
活動日数 106日
支援対象者実人数 842人
支援対象者延べ人数 336人
参加ボランティア実人数 58人
参加ボランティア延べ人数 271人
本助成金による活動の成果
緊急期の活動を経て、住民の方、役場の方、支援団体の方々と信頼関係を築くことができ、2月中旬頃からは、生活再建に焦点を当てた活動に切り替え①被災家屋の片付け、②避難所などでの棚作りを通じた居住環境の改善、③住宅再建に関する相談事業への取り組みを本格始動した。
①の家屋片付けは、1月頃から避難所にチラシを掲示し受け付ける方法をとったが、多くの被災者が心の整理に時間を要し、被災者自身で少しずつ片付けを進める傾向にあった。災害ゴミの回収が始まった2月になると、家屋片付けにあたる住民の姿が多くみられるようになり、顔見知りの住民に声掛けするなどし、徐々に相談が寄せられるようになった。片付けニーズが増えた2月末からはボランティアを動員して本格的に家屋片付けに取り組み、計32世帯を支援した。
一方、②の居住環境改善にあたっては、門前町役場に寄贈された「緑の募金」による木材をハビタットが一任し、3月は各避難所の要望を取りまとめ、避難所のスペース改善に必要な下駄箱や物資棚、また居室のプライバシー確保にもなる間仕切り棚などの製作に取り組み、各避難所で住民、そしてボランティアを交えて棚作りを行った。仮設住宅への入居が開始した3月末からは、「支援物資を置くところもない」といった住民からの声を受け、個人世帯を対象にオーダーメイドの棚作りを実施した。ワークショップ形式で実施したことにより、居住環境の改善のみならず、新たに形成されたコミュニティでの住民同士の交流を育む機会となった。棚作りは、活動開始当時、450名以上の方が身を寄せていた計10箇所の避難所で3月末まで実施し、その後、仮設への入居が始まった3月末から5月末までに、計3ヵ所の仮設住宅で棚作りを通じて97世帯の居住環境の改善を支援した。家屋片付け、そして棚作りには、ボランティアを要することから、ハビタットの学生団体を中心に支援者にボランティアの呼びかけを行い、アクセスが困難な門前町への送迎や宿泊を提供することで、延べ271人を動員し、支援を実現することができた。
③家屋相談事業においては、連携する県内の建築士が被災家屋に直接足を運び、家屋に関する助言を与える事業であることから、口コミで活動が広がり、助成期間中に67世帯を支援し、住宅の再建に関して被災者が選択肢を広く持てるよう支援することができた。
事業を実施する中で見えてきた課題と今後の取り組み
活動を展開する中で見えた課題は2つある。
一つ目が、ボランティア動員に欠かせないアクセスと滞在拠点の問題である。今回の地震では、道路や水といったインフラが甚大な被害を受け、復旧に多くの時間を要した。また、門前町は県外から訪れる者にとっては、起点となる金沢駅からのアクセスが限られるなど移動に課題がある。そして、多くの家屋が被害を受けた半島での地震であったことから、被災地における支援団体の拠点確保が困難な中で、ボランティアの滞在拠点を確保することは困難を極めた。ハビタットは、幸いにも金沢大学を拠点に活動する学生団体を有していたことから、2月中旬以降から自家用車で門前町にアクセスできる学生ボランティアの日帰り受入を開始できた。一方、ボランティア拠点については、役場との関係を築く中で、2月下旬よりスタッフ拠点を戸建ての建物に移し、スタッフ拠点をボランティア拠点として併用することができた。そこで、本助成を活用し、レンタカーで金沢と門前町間の送迎を行い、県外の学生ボランティアを中心に、計5回2泊3日のボランティア動員を実現した。しかし、受け入れ人数が限られるため、毎回お断りせざるを得ない希望者がいるなど、被災地のために行動したいと思う全ての人の気持ちを受けるには課題が残った。
二つ目が、緊急支援にあたる災害支援コーディネーターの育成である。いつ何時発生するか分からない災害に対応できるコーディネーターを常時育成することが迅速に災害支援にあたるうえで欠かせない。今回の災害では、被災地の現場を担当した元災害支援コーディネーターを再雇用することで支援を展開できた。今回の震災で培った経験や他団体との繋がりを団体内のスタッフに継承することが、今後の災害への備えになると考える。
今後の展望としては、現在実施する仮設住宅に暮らす個人世帯向けの棚作りの機会を、全ての仮設住宅に入居される方に等しく提供すると共に、活動する中で聞こえてきた在宅の方への支援の隔たりを解消するため、在宅避難者にも棚作りを実施していく。また、長期的な展望としては、門前町で培った行政や支援団体、建築士との連携の仕組みを団体内のスタッフに継承し、人材の育成に取り組むと共に、ボランティアの担い手として活躍したキャンパスチャプターの存在を見直し、今後の災害への対応を検討していく。
助成決定した活動を報告したSNSやホームページのURL
https://habitatjp.org/
https://www.instagram.com/habitat_japan
寄付してくれた人へのメッセージ
この度は、ボラサポを通じてハビタットの活動をご支援くださり、心より感謝申し上げます。緊急支援として立ち上げた門前町での被災者支援を継続し、被災された方に寄り添い事業が継続できたのも、ハビタットの活動に助成をいただき、多くのボランティアを巻き込み活動を継続することが出来たからです。
「この家が建って160年。先祖代々守ってきた家だけど、、」そう話されたのは、被災家屋の相談事業で訪れた家主さんのお一人です。被災後、数日避難所で過ごすものの、ご夫婦で自宅に戻り、避難生活を続けてきたそうです。ご自宅は、罹災証明書で『全壊』と判定されるなど、玄関周りは基礎が外れ、今にも崩れ落ちそうな状態です。家の中は、あちらこちらの壁がはがれ落ち、建具は開かないところがあるなど、地震による被害が目立ちます。それでも、家主さんにとっては愛着のあるご自宅です。「このまま住み続けることができるのか」そんな思いをもって相談を寄せてくださいました。家屋の被害状況を建築士が確認し、絵に描き起こして家主さんに修繕が難しいことを伝えると、お父さんは少し残念な顔を見せながらも、「スッキリと壊さなきゃいけないと分かりました」と最後は晴れやかな顔で感謝の言葉を伝えてくださいました。家屋を解体するか、修繕するか、このまま住み続けられるのか、その判断に悩まれる被災者の方が選択肢を広げ、住まいの再建に関する見通しが立てられるようサポートしてきました。
一方、仮設住宅で実施した棚作りでは、ボランティアが家主さんのお宅を訪問し、生活に必要な靴箱や洗濯場の棚、収納棚など個別の棚作りに取り組みました。「こんな棚がほしかったのよ」「これでモノが整理できるわ」という言葉を毎回のようにいただくことができました。また、棚作りや家屋片付けに参加したボランティアからは「大変な生活をされている中にもかかわらず、家主の方がとても温かく接してくれました」「現地に行けずにもどかしい思いをしていましたが、ボランティアとして活動できてよかったです」といった感想が寄せられました。
本助成をいただくことで、支援の担い手となる多くのボランティア、そして建築家と連携し、被災された方に寄り添えたことに心より感謝申し上げます。ありがとうございました。