大阪市で生活する外国人のための地域資源マップ(ガイドブック)作成事業

団体名 特定非営利活動法人若者国際支援協会

都道府県 大阪府

助成額 1,810,000円

活動開始日 2023/10/1

活動終了日 2024/9/30

助成金で行った活動の概要
本助成事業では、日本語教育支援を通じてこれまで当法人が蓄積してきた外国にルーツのある家庭と支援機関のネットワークを活かし、大阪市内で外国人支援に役立つ相談窓口及び個別トラブル事例について支援者・当事者へ聴き取り調査・インタビュー等を行い、その調査成果として総括して外国人が利用できる地域資源マップ(ガイドブック、以下ガイドブック)の制作と頒布に取り組んだ。
特にこれまで連携のあった大阪市内社会福祉協議会-6区、区役所、子育て支援、DV等相談施設等の担当者等、市民団体などのフォーマルな地域資源に加えて、自助グループ及び外食食材販売店/レストランなどこれまで社会的に注目されてこなかったインフォーマルな地域資源、計121名(ケース)に協力を依頼し独自に調査を行った。特に中国語・タイ(イサーン)語をルーツとする調査グループを形成し、調査方法については社会調査の専門的知見を有する識者による講義と支援をいただいた。その成果として、質問項目を調査票にして回答を回収し、データ解釈に総合的で多角的な視野を踏まえるなどデータ分析の手法の学習と実践にも取り組んだ。
 調査結果を踏まえて、特に外国人が生活上に困る事例として、①人権のなやみ、②こころのなやみ、③家族のなやみ、④教育(出産-子育て)のなやみ、⑤健康のなやみ、⑥労働(職場)のなやみの6項目を抽出した。それぞれの項目では、どのような知識と情報が不足するために外国人が相談窓口へのアクセス-相談-解決(出口)の3つのプロセスで課題を有しているのかを明らかにし、その必要な知識と情報を整理した。
 以上に加えて、特に外国人が利用可能な通訳対応などに取り組んでいる公共相談窓口・資源の調査を行い、その窓口の連絡先を整理してガイドブックとしてタイ(イサーン/ラオス)語・日本語を制作し、本助成で出版することができた。
作成したガイドブックは広くオンラインで公開した他、大阪市内の公共相談施設、連携実績のある病院(歯科クリニック等含む)、食材販売店・レストラン、自助グループ等に設置・配布を依頼し、大阪市内(一部、大阪府下)54か所に頒布することができた。設置依頼時、「ガイドマップをただ頒布するのみではなく、説明会や学習会を開催」を希望する声が届いたため、オンライン(4回)及び対面(2回)にてワークショップ(全6回)を実施するなど、事業実施途中からも反響と手ごたえを得ることができた。

活動日数 144日

支援対象者実人数 15人

支援対象者延べ人数 121人

参加ボランティア実人数 12人

参加ボランティア延べ人数 133人

本助成金による活動の成果
本事業は外国人当事者・自助グループを主体とした調査研究チームによる研究として、市民団体ならではの調査ができた点が大きな成果であった。たとえば日本へ移住して間もない農村等地方出身の外国人にとっては、警察や専門家が介入すべき司法・触法ケースの困りごとや人権侵害・暴力案件について相談すること回避する傾向が強いことがわかった。このような背景として、東南アジアの地方地域の警察司法行政への不信がある。たとえば、ニューカマーの出身地域の多くでは、警察や救急車を電話で呼んでも現場にはすぐにはかけつけてくれない。また行政側の汚職や市民への暴力事案が常習化している現実から、外国人は母国でも行政機関を信頼していない、という社会的背景がある。言語の障壁のみではなく、文化(歴史)的障壁が大きいことがわかった。
また家庭内の暴力、子育ての悩み、進路の悩み、職場の悩み、などいずれも社会の仕組みについての理解が必要な相談が多いことがわかった。たとえば、「子どもを学校に行かせること」という日本人にとっては一般的な親の教育姿勢も、外国人ニューカマーの親世代の一部はそうではないことがある。これは公平な試験制度・能力に応じた就職活動(キャリア開発)がほとんど整備されず縁故で就職が決まってしまう社会からやってきた外国人にとって、高等教育の重要性や専門的能力の向上と就職機会が結びついていないことを示している。
これら外国人が多くもつ生活上の悩みは、家族福祉の領域(親戚を含む)か社会階層的にクラスタ化した友人・知人等から入ってくる限られた情報源と相互扶助で対応されているのが現実である。結果として、情報と知識不足から相談者側である外国人が公共相談窓口などの社会制度を利用する意思形成(認識)段階でつまずきが生じていることが判明した。これまで「言語的・文化的理解の障壁」と括られてきがちであった外国人の生活課題を、具体的に明らかにすることができた点は大きな成果であった。団体としては大阪市内の多職種機関と情報を共有する機会となった他、調査研究の重要性を地域のリーダーシップのある外国人が学び体験することができる機会となった。参加した各自が大きな成長と多文化共生・社会福祉の将来的な意義を実感する機会となった。

事業を実施する中で見えてきた課題と今後の取り組み
本事業を通じて団体として実感することができた課題は、大きく二点に集約することができる。第一にガイドブックの認知については未だ大阪市内では不十分な状況である点である。たとえば、前述の通り多くの悩みを抱えている外国人市民は「自分自身の悩みが誰かの相談・支援が必要な悩みである」という認識に至るまでに課題のあることが判明した。ガイドブックを地域に設置しただけで、それを利活用できる人々少ないであろう。しかし、本事業の申請段階ではガイドブックの頒布と設置を短期間で設定してしまい、これに性急に取り組むこととなってしまった。そのため今後はワークショップ等の教育プログラムとして使用できる教材としてガイドブックを紹介できる生活オリエンテーション教育の開発に取り組む必要がある。時間をかけて一人一人、ガイドブックの理解者と紹介者を拡げていくことが、実質的な事業の成果につながっていくと考えている。
第二に当団体のスタッフを含めた支援者側も、東南アジアの社会・文化、日本の法制度を十分に理解していない場合が多いことに気づかされることとなった。当団体の場合は日本語教育支援、ということを切り口として相談ケースに対応してきたもののソーシャルワークの十分な知識をもった支援員を擁しているわけではなかった。また基礎的な司法・法制度を理解したうえで、適切に外国人へ生活のオリエンテーションができる日本人はまだまだ大阪市内では不足している。そのような意味で、たとえば行政書士などが日本の近代化において担っていたような、言語が不自由な市民(外国人)と行政の窓口をつなげうる専門家の社会福祉的な地位と役割は十分に認識されていないことを実感した。日本人を対象に前提としてきたリーガルソーシャルワークとは異なる、新しい司法と福祉の関係構築の重要性について発信していく必要性があると考えている。

助成決定した活動を報告したSNSやホームページのURL
https://wakamono-isa.com/archives/129616
https://wakamono-isa.com/archives/129625



寄付してくれた人へのメッセージ
皆様の心ある寄付のおかげで、本当に多くの日本人と外国人が出会い、ともに考え、悩みながら絆を深めて地域資源マップ(ガイドブック)の完成に到ることができました。この成果をただ1年で終わらせるのではなく、次年度以降はしっかりと利活用に向けた理解を拡げ、孤立し悩んでいる外国ルーツの市民がひとりでも多く笑顔になることができるよう励んでいきたいと思います。

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