人身取引被害を受けるJFC(Japanese-Filipino children)の実態調査事業

団体名 特定非営利活動法人JFCネットワーク

都道府県 東京都

助成額 1,605,532円

活動開始日 2023/10/1

活動終了日 2024/9/30

助成金で行った活動の概要
2009年1月に改正国籍法が施行され、両親が結婚をしていなくても、日本人の父親に認知をされた子どもたちは20歳になるまでに(現在は18歳)届出をすることにより日本国籍を取得できるようなった。この国籍法改正は国際婚外子の日本国籍取得の道を拡げ、フィリピン在住のJFC母子にとって権利や機会の促進に繋がった。つまり、子どもが日本国籍を取得すれば、フィリピン人母も日本国籍の子の養育者として日本に定住し就労することが可能になった。
 その結果、この国籍法改正は、日本行きを目指すJFC母子の急増をもたらした。こうした流れを受けて、JFC母子の来日を仲介する業者や団体が設立されていった。「支援」や「慈善」をうたい、JFC母子の相談にのり、日本語指導、日本への渡航手続き、日本での就労斡旋なども行い、JFC母子を日本に送り込んでいる。しかし、こうした仲介業者の中には、渡航経費の金額、返済条件、仕事内容、労働条件などに関しての事前説明が不明瞭、契約書がない、あるいはあっても日本語のみで本人たちは理解していない、本人たちに契約書の写しを渡していない、あるいは渡していても実際の契約書の内容とはまったく違った仕事を強いられる、給料からの借金の天引き、「預かり証」を作成してパスポートを取り上げる、などの違法な行為を行う業者が存在している事例が報告されていた。
 特に新型コロナ感染拡大の影響でロックダウンが長引き、フィリピンの経済状況は悪化し、生活が困窮化している中、日本国籍を取得したJFCとその母親たちは貧困からの脱出に望みをかけて、手続きが簡単で現地でリーチしやすい悪徳業者を通じて不当な契約の下、「搾取的な移住」に陥っている実態が見受けられた。当団体は、日本国籍取得がJFCの人生の可能性を広げ、幸せにすることを期待して活動をしているが、必ずしもそうではない実態もあり、「搾取的な移住の根絶のためには何が必要か」に、「来日したJFCが幸福になるためには何が必要なのか」といった視点を加え、日本の制度の不備やJFCの価値観をさぐり、今後のよりよい政策提言を行うため、「JFCの就労・生活・幸福度調査を実施した。
 具体的には、フィリピン語話者である調査員が、JFネットワークで扱ったケースで、認知を得たり、日本国籍を取得したりした後に来日し、現在(一部は最近まで)日本で就労しているJFCやその母86ケースに、来日の経緯、就労条件、生活等について実態を聞き取るインタビューを実施し、その結果を分析し、課題などを探った。
(注JFC・・・Japanese-Filipino children)

活動日数 131日

支援対象者実人数 86人

支援対象者延べ人数 86人

参加ボランティア実人数 1人

参加ボランティア延べ人数 1人

本助成金による活動の成果
調査の結果以下のことが明らかになった。
1)来日の背景・動機・過程について
今回調査に応じてくれた84名のJFCは、多くが高校以上の学歴を持っている20代から30代の若者で、「日本人」または「日本人の子」として来日していた。来日を決心した理由は、「就労のため」という経済的動機が最も多く、「日本人の父親との再会」や「アイデンティティの確認」、「日本を経験する」という心理社会的動機も多くみられた。これら複数の因子が接合ないし重複して来日を決意したと考えられる。
来日の方法は、84名のうち半数が仲介業者を通して来日していた。①仲介業者の日本の派遣会社がバックにある組織的なエージェントを通して来日したケース、②JFCと直接的、もしくは間接的につながりのある個人がJFCを仲介業者への橋渡し役になっていたケース③JFCの支援組織や知人の紹介で来日したケースがあった。来日後、劣悪な生活環境・労働条件にいたJFCもいた(個人の仲介で来日)。このケースは来日時年齢が10代と低かった。また保証人がいないJFCで、「来日の借金を完済前に逃亡したらフィリピンの母親を拘束する」と脅迫されていた事例もあり、この場合、JFC本人が就労先を自由に選択できず、不安全で搾取的な環境に陥る等、深刻な問題のある事例もあった。

2)就労の状況について
日本で、人手不足とされている製造業を中心にサービス業、建設業に従事しているJFCが多く、非正規雇用の割合も多かった。収入は、月収20万―30万の層が多く、極端な低賃金労働の事例は、調査ケースにはなかった。転職は、大多数が友人の紹介で転職していたが、日本語能力の問題で、キャリアアップは難しい状況にいる事例が多かった。コンプライアンス面では、労働条件通知書がなかった事例、雇用契約書が日本語のみで理解できなかったなど問題のある事例もあった。JFC達は、収入面ではある程度の満足は得ているが、現状が将来のキャリアにはつながっていない就労の実態があり、流動性の高い労働力として日本の労働市場を下支えする存在とさせられていることが見えてきた。

3)幸福度について
数値としては、JFCが感じている幸福度は高いという結果がでた。これは来日当初から幸福度が高かった訳ではなく、来日直後の苦労を経て、努力して問題を克服した結果、現在の幸福度が高くなったということがわかった。幸福度を下げる要因として、経済的問題、家族との離散、日本人父からの拒絶体験、オーバーワーク、職場のストレスがあった。一方幸福度が高いJFCは、日本語の上達に努めた、家族を呼び寄せた、困ったときに相談する相手や場所があることが明らかになった。

事業を実施する中で見えてきた課題と今後の取り組み
調査の総括と提言
JFCたちが今日の日本における重要な働き手の一角を占めていることは間違いない。来日動機も経済的動機を中心にしながら、父親との再会や日本経験など複数の動機が重なり合う中で、親族や知人、さらには支援組織を基盤とするネットワークの中で、渡航が実現している。
 今回の調査結果から言える範囲にとどまるが、就労そのものや収入面での安定性は、主観的な幸福度には必ずしも直結していなかった。もちろん、現在の生活への満足度が高いケースもあるが、それは日本で実現されたというよりも、もともと本人がフィリピンで持っていた資源によるところが多かったり、今日にいたるまでの困難を克服したりしたことによるものが大きい。
 何か困ったことがあった時に相談する相手は、「家族や親戚」が主で、「相談相手がいない」という人もいることから、日本社会との接触度合いもそれほど多くなく、家族や親族、知人のネットワークの中で来日、就労、転職し、家族形成が部分的に進む、という傾向は、日本で主流を占める結婚移民から永住者へのルートをたどり日本社会に埋め込まれていったフィリピン人女性(JFCの母親世代)たちや、生活や就労が就労先および監理団体によって厳格にモニタリングされている技能実習生とも異なる状況である。
日本での生活での生活は非正規雇用で流動的ではあるものの、フィリピンと比べると相対的に稼げるようになったが、JFC達は「フィリピンにいる家族と離れていること」や「日本語が出来ないこと」が要因となって「生きづらさ」を抱えて日本で暮らしている。JFCは「日本人」「日本人の子」として日本に来るための切符を手にしたが、その背中にはフィリピンにいる家族の存在が見える。「日本人」「日本人の子」でありながら、「家族のため海外へ行く」というフィリピン人移民に共通するロジックが働いているように思われる。「家族との幸せ」を得るために「日本人」「日本人の子」という法的地位が役に立つはずが、「家族と離れる、すぐに会えない」というコストを支払って得られた収入は決して有り余るほどのものではなく、限られた生活費のなかで仕事に追われる暮らしを送るという他の日本人にも通ずるような閉塞感に多少なりとも直面しているといえよう。一般化することはできないが、今回の調査によってフィリピンから来日したJFCたちの暮らしには、このようなジレンマがあることが、今回の調査によって浮かび上がったのではないだろうか。

以上の調査分析を踏まえ、JFC達の搾取的な移住の根絶、来日したJFC達が日本で幸福になるため、以下提言をしたい。
1.悪質なブローカーをなくし、透明性の高いエージェントとの契約でしか来日ができないように、より効果的で実効的な監視を行うなどの政策と、その実施。その際の、フィリピン政府との協力体制の構築。
2. JFCが、労働者としての基本的な権利が守られ、来日前から日本で就労を開始した後まで、安心して働けることを促進するための仕組み作り。
3.JFCが日本で困った時に相談できるような、より豊かな人間関係を構築していくための支援の提供。
4.来日したJFCの幸福度を高め、日本への社会統合を進めていくための重層的なセーフティネットを提供していくにあたっての、日本政府、自治体、および市民社会の連携。

助成決定した活動を報告したSNSやホームページのURL
https://jfcinvestigation2024.peatix.com/
https://note.com/jfcnetwork_tokyo/n/nc0c9447cce3a



寄付してくれた人へのメッセージ
皆様からのご寄付のおかげで、今回の調査事業を実施することができました。ありがとうございました。
今回、被調査者のJFCには調査協力の謝礼として、3000円のクオカードを差し上げました。日本で暮らすJFC達は生活がギリギリのケースもあり、とあるJFCの青年はクオカードを受け取った時「ありがとうございます!大切に使います!!助かります」ととても喜んでいました。今回の調査が実施できたことに加え、クオカードが困難な生活にあるJFC青年たちの支援にもなりました。ご寄付に感謝します。

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