神奈川県西部地域に暮らす外国ルーツの子どもとその家族のコロナ禍におけるニーズ把握ヒアリング調査及び行政担当部署へのヒアリング調査プロジェクト

団体名 はだの子ども支援プロジェクトゆう

都道府県 神奈川県

助成額 198,531円

活動開始日 2021/11/1

活動終了日 2022/9/30

助成金で行った活動の概要
 神奈川県西部地域には外国ルーツの子どもとその家族が散在して暮らしている。日本語力の不足だけでなく日本特有の様々なシステム・慣習に起因する困難により、日本での生活が営みにくい状況が生まれている。特にこの地域では、行政による外国人への情報提供、サービス提供が十分でないことが、複数の教育委員会や社協などの関係機関から当団体(はだの子ども支援プロジェクト ゆう)に寄せられるSOSや相談によって明らかになっている。また、普段の支援活動を通して外国人住民からも子育てや教育、仕事などに関する相談や声が寄せられている。このような状況を考えると、この地域に在住する外国人住民の「生活しづらさ」は、コロナ禍以前からあると思われる。そして、コロナ禍の社会においてはその厳しさが増していることが危惧される。
 そこで、当団体では、今まで当団体のメンバーが日頃の活動から感じ取っていた外国人住民の生活実態やニーズを正確に把握し、「生活しづらさ」を解決する具体的な糸口を探るために以下の2つのインタビュー調査を行った。
【調査①外国人住民へのインタビュー】
実施期間:2022年5月~6月
対象者:16人(当団体の日本語教室参加者、家庭訪問支援を行っている家庭の保護者)
インタビュー内容:以前から抱えている悩みや困りごと(日常生活、職場、教育など)、コロナ禍での困りごと(情報収集、ワクチン接種など)
実施方法:「ゆう」の日本語教室への参加者と、家庭訪問支援をしている家庭の保護者に調査を依頼し、必要な方には通訳に同席してもらったうえでインタビューを実施した。
【調査②自治体の外国人住民担当部署・窓口へのインタビュー】
実施期間:2022年7月~8月
対象自治体:3市町の多文化共生対応部署、子育て・教育関係部署 (インタビュー協力者13人)
インタビュー内容:コロナ前後の状況の変化と支援体制、窓口への相談内容、対応に苦慮していること、市民と協働したいこと
実施方法:外国人住民と関わる部署に調査を依頼し、1つの自治体は各課の担当者個別に、残り2つの自治体は関係部署合同でインタビューを実施した。
 これらの結果が明らかになることで、これまでの活動にとどまらない支援について市民活動団体として何ができるのかを探り、支援内容を充実させていきたいと考えている。また、特に自治体や関係団体と真の協働活動を構築していくための基礎資料としたい。

活動日数 60日

支援対象者実人数 29人

支援対象者延べ人数 29人

参加ボランティア実人数 23人

参加ボランティア延べ人数 59人

本助成金による活動の成果
外国人住民へのインタビューについては、収録したインタビューを文字化し、そこから共通して出た語りを①生活に必要な情報の収集方法②仕事③子育て・教育・学校④医療の対応⑤コロナの感染対策⑥行政の窓口対応⑦災害・防災⑧家族・より良い生活を求めての8つに整理した。8つの項目のうち、特に情報量の多かった②③⑥について詳細を述べる。
 ②仕事をめぐる問題については、雇用形態が不安定であること、仕事内容や環境が厳しいものであること、職場からの情報提供やサポートが不十分であること、という3点があげられた。
 ③子育て・教育、学校については、3つの論点があることが見えてきた。第1は、コロナ禍において、休校などの伝達、連絡については大きな混乱がなく伝わっていたこと、第2は教育に関する経済的不安を抱えている当事者が多いこと、第3は学校が危機感をもって伝えたいと思う情報は確実に家庭の側に伝わっているのに対して、外国人家庭の側の疑問や不安が拾い上げられていないということである。
 さらに、⑥行政窓口の対応については、行政からの情報は十分だ、対応は親切だという声がある一方で、最も多かった回答は役所に相談したことはない、相談窓口があることも知らないという声だった。問題を抱えても、行政機関に相談するのではなく、同国人同士のコミュニティに聞くほうが早くて便利だという意見もあった。
 自治体の外国人住民担当部署・窓口へのインタビューでは、外国人住民の急激な増加という状況にある神奈川県西部の自治体の担当者が、増加する外国人住民への対応に苦慮していることがわかった。人口規模が小さい町での取り組みは、ニーズに応えるものになっていた。しかし、人口規模の大きい市においては、個々の担当者が個人レベルで意識を持って外国人住民のことを考え動いていることが明らかになった一方で、自治体として多文化共生型の事業推進にシフトしていくことの合意を作ることに難しさがあることが見えてきた。
なお、これらの調査結果は、報告書としてまとめて印刷し、神奈川県西部を拠点とする外国人支援団体、行政などに配布した。

事業を実施する中で見えてきた課題と今後の取り組み
 外国人住民へのインタビュー調査の際、困ったことはあるか、悩みはあるかと質問すると、多くの人は困っていないと答えていた。私たちは外国人住民には困っていることがあると決め付けてインタビューをしていたこと、困っていることの有無を尋ねられて困っていると答えることへの抵抗感に気づかされた。インタビュアーが表現を変えて質問し直したり相手に共感しながら話を聞こうとしたりすることで、外国人住民の困り感に辿り着けた側面もあるかと思う。 
 一方で外国人住民が実は困っているけれど、取り立てて言うようなことではなく、ごく当たり前の状態だと捉えている思われることもあった。それは、例えば外国人住民の身近に日本語に堪能な家族や友人がいなければ、欲しい情報を入手することが困難であるという点である。身近に日本語が堪能な家族や友人がいる間は問題は起こらないが、頼りにしている人に手伝ってもらえないとき初めて問題が生じるのである。では、実際に問題が生じたときどこに相談するか。その時は行政窓口が選択肢の1つになると考えられるが、今回の外国人住民への調査では、行政からの日本語の情報を積極的に取得し利用している人は一部の人に留まっていた。行政へのインタビューでも、行政は一方通行の情報発信をしており相談されるのを待っている傾向があると話していた。この調査から、困っていることに気づきにくいまま日本で生活を続ける外国人住民と、相談がないことを理由に困っていないと判断する行政(特に人口規模の大きい自治体)の構図が垣間見えた。
 さらに、多文化共生社会の実現が求められることは理解されていても、それをわが町のこととして地域の人びとが了解すること、行政の体質やしくみをシフトさせていくことは、容易ではないことが、調査結果から見えてきた。外国人住民が日本社会のさまざまなシステムの中に、特にそのシステムとして最重要である地域社会というシステムの中に包摂されていないことが大きな課題である。コロナ禍の対応については、今回の調査では大きな混乱は見られなかったが、日常的には、仕事や教育、地域社会への包摂といった点で、外国人住民は困難を抱えている実態が見えてきた。 このような状況を前に、行政の担当者たちは「思い」としては困難を受けとめて、何とかしなければと感じ、できる個人的努力をしていることがわかった。しかし、行政全体がポリシーをもって多文化共生の社会づくりに取り組むことの前には、まだ大きな壁があることも明らかとなった。 本調査の結果を受けとめ、県内、県外の優れた事例に学びながら、一人でも多くの地域の人びとを巻き込みながら、これからの「ゆう」の実践を多文化共生の社会づくりに資するものにしていきたい。

助成決定した活動を報告したSNSやホームページのURL
https://pjyou.jimdofree.com



寄付してくれた人へのメッセージ
今回のインタビュー調査は、当団体にとって初めての大がかりな取り組みでありチャレンジとなりました。普段の活動の中でなんとなく肌で感じていた外国人住民の不安や困り感、行政との連携の課題を、調査によって浮き彫りにすることができました。中央共同募金会、基金のための寄付をしてくださった皆さまをはじめ、多くの方にご協力をいただいて無事に調査を終え、報告書を発行することができました。ここに感謝申し上げます。