難民の背景をもつクルド人住民の学びとつながりを支えるための日本語教室事業

団体名 特定非営利活動法人メタノイア

都道府県 東京都

助成額 2,990,000円

活動開始日 2023/10/1

活動終了日 2024/9/30

助成金で行った活動の概要
埼玉県川口市および近隣地域に在住するクルド人難民申請者・仮放免者とその家族を主な対象として、日本語教育および学習支援事業を実施しました。活動拠点である川口市の教室において、日本語教師有資格者を中心とした専門性の高いスタッフによる日本語教室を週3回(月・木・土曜日)開催し、学習者の日本語レベルや学習ニーズに応じた個別指導を行いました。特に子どもたちに対しては、学校の宿題サポートや教科学習支援、高校進学支援など、日本語指導にとどまらない包括的な支援を提供しました。
2023年8月に日本政府が発表した在留特別許可の方針を受け、日本で生まれ育った子どもたちとその家族の多くが安定した在留資格を得られる可能性が開かれました。実際に、この1年で在留資格を得る子どもとその家族が大幅に増加しています。これからも長く安定した形で日本に在留し、進学・就労できる選択肢が得られたことから、より一層の学習支援の必要性が高まっています。そのため、学習環境の整備や教材の充実、日本語学習支援コースデザインの作成にも注力しました。
加えて、昨今その苛烈さを増しているクルド人へのヘイトスピーチが、インターネット上のみならず、教室のある地域の駅前においてもデモ等が行われるようになっています。その現状に鑑み、高校生からシニア層までの地域在住ボランティアの受入を積極的に行うことで、地域の中で出会い、知り合い、ともに生きていくための実践の場となるよう工夫をしています。

活動日数 134日

支援対象者実人数 120人

支援対象者延べ人数 1059人

参加ボランティア実人数 24人

参加ボランティア延べ人数 224人

本助成金による活動の成果
本事業参加者の中から今年も高校進学を果たした者や、漢字検定などの資格試験に合格する者が出てきました。着実な学習成果が表れています。また、在留特別許可を得た子どもたちの学習意欲の向上も大きな成果の一つとして挙げられます。将来の進学や就労に向けた具体的な目標を持つようになり、それに伴って学習に取り組む姿勢も積極的になってきています。
一方、学習意欲の向上が目に見えて表れることがあまりなかったり、学力の大幅な向上が見られない生徒もいます。ある一人の小学生は、1年生から日本の公立学校に通っていますが、高学年になった今でも、2桁の引き算をすることもままなりません。これには複合的な理由が考えられます。一つは、小学1年生の就学時点で十分な日本語の理解力が無かったため、初期の算数の授業がまったく分からないまま授業が進んでいき、日本語の理解が追いついた頃には算数の遅れが取り戻せないほどに広がってしまっていたという経緯です。加えて、数の概念が把握できていないという特性から、例えば繰り下がりを瞬時に計算することができず、算数の問題の回答にたどり着くまでに大変な労力を要するという背景もあります。そうすると学習が億劫になり、やりたくなくなっていく。他のことに気移りしやすくもなります。
こうした子どもに対する本事業の成果は、学力の目覚ましい向上というよりも、丁寧に寄り添い続けてくれる先生たちを通じた「信頼するに足る他者と出会った経験」の獲得、にあると考えています。これからの人生でも、自分の力で生き抜くことだけでなく、「誰かに頼って助けてもらったり、自分が誰かを助けたりもする」という関係性を周囲と構築していけるかどうかが、本人の人生における幸・不幸を左右するとするならば、そういった「ともに生きていく」スキルを身につけるきっかけを提供できたこともまた、本事業の成果の一つと言えると思います。

事業を実施する中で見えてきた課題と今後の取り組み
主な課題として、以下点が明らかになりました。
第一に、学習者数の増加に伴う会場スペースの不足です。在日クルド人の方々の在留ステータスや就労資格の状況が好転しはじめていることから、教室の門をたたく学習希望者の数が増加を続けています。
加えて、学齢児に留まらず、その保護者ら成人や既卒者(中学校卒業後に進路未決定状態にある10代)、幼稚園・保育園に通っていない就学前幼児に至るまでの日本語学習のニーズが高まっています。それに伴い、午前から午後の早い時間帯にかけての成人/既卒者向け日本語クラスや幼児向けプレスクールのニーズが高まっています。
さらに、週2-3回の開講だけでは、短期間で効果を上げる必要がある初級の日本語学習者や、既卒・不登校・不就学・不就園など居場所のない子どもたちの居場所提供機能を十分果たすことが難しいという課題も見えてきました。

これらの課題に対しては、新たに、他の短期助成事業で常設型日本語教室「Mutluわらび」を設置することで、取り組み始めています。そこで、日本語教室を午前から夜まで、週5日開講することで、保護者等成人から小学生までの上記ニーズに対応しようと試みています。加えて、近隣のクルド人コミュニティの管理するスペースを借りて、保育園・幼稚園に通っていない幼児を対象としたプレスクールも開始しています。

今後は、本事業と上記の諸事業を効果的に連携させて総合的支援スキームを構築し、クルド人の子どもたちと家族が地域社会で安心して暮らせるよう、支援の質と量の両面での充実を図っていきます。

助成決定した活動を報告したSNSやホームページのURL
https://metanoia.or.jp/4494/



寄付してくれた人へのメッセージ
皆さまの温かいご寄付に感謝いたします。この一年、政府による正規の在留資格付与により、クルド難民の子どもたちとその家族は、未来に向けた新しい歩みを始めました。高校・大学に進学して就職をしたり、家族を養って幸せを追求することも許されるようになり、生きる世界が大きく広がってきています。
この機会を十分活かすため、皆さまにいただいたご寄付をもとに日本語の学びを深め、自分の持って生まれた力を高める努力ができるようになってきています。ひとえに皆さまのお支えのおかげです。本当にありがとうございます。

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