都道府県 東京都
助成額 866,906円
活動開始日 2022/10/1
活動終了日 2023/9/30
助成金で行った活動の概要
〈概要〉
埼玉県川口市及び近郊に暮らすクルド人難民申請者等(以下「クルド難民」)の子どもやその家族を主な対象に、学習者個々の日本語習得レベルに合わせた個別の日本語学習支援を行いました。また、子ども(小学生~高校生)には宿題サポート、教科学習支援、高校進学支援なども行いました。加えて、日本語能力試験(JLPT)や漢字検定などを受験したい学習者には集中的な学習機会を提供しました。
開講日は、月・木・土曜日の週3回で、1回あたりの開講時間は3-4時間程度でした。
〈詳細〉
教室には、就学前の5歳くらいの子から高校生、また来日間もない子まで、多くの子どもたちが訪れました。それぞれの背景はとても多様です。まだ幼かった頃に家族と共に来日した子、日本で生まれた子、つい数カ月前に来日した子。日本語の習得状況や、日本語に関する課題の内容も個々人に応じて様々です。
教室では、そのような個々の状況に合わせて、学習内容やサポート方法を変え、子どもたち一人ひとりにとって有意義な時間が過ごせるようにと試行錯誤してきました。学校の宿題やテストに向けた勉強など、本人のやりたいことを中心にサポートするケースもあれば、在籍学年の学習内容を理解できるようにするために、学年を遡って基礎学習をし直すように促すケースや、受験に備えてその子に必要な分野の問題を用意するケースなどもありました。来日間もなく日本語の習得がこれから、という子には今後の生活環境を踏まえた日本語の学習支援を行う場合もありました。
それぞれの状況が多様なために1対1の支援が中心となる教室ですが、そのような中でも様々な大人とつながり、誰とでも話がしやすい場、安心できる雰囲気づくりを大事にしてきました。「ここの大人はみんな自分を受け入れてくれる」「学校でも家でも話せないことを聞いてくれる」と思ってもらえたら、学習内容の習得と同じくらい、もしくは人生においてはそれ以上に大切な、自分で自分を受け入れ、認めてあげる力を育むことにつながるという思いからです。学習面のサポートを入口に子どもたちとつながり、どこにも吐き出せないつらく悲しい思いを抱いたような時でも、ここに立ち寄れば心が励まされる、子どもたちにとっての逃げ場のような存在でもありたいと願って、活動してきました。
活動日数 125日
支援対象者実人数 86人
支援対象者延べ人数 925人
参加ボランティア実人数 28人
参加ボランティア延べ人数 148人
本助成金による活動の成果
高校進学を目指して受験勉強に励んでいた中学3年生が、埼玉県立の普通高校に合格することができました。家庭の経済状況が苦しく塾に通うこともできない中、本事業の日本語教室に熱心に通い、講師やボランティアと1対1で熱心に学習を続けました。定時制高校や夜間高校という選択肢もありましたが、努力家である本人はそれでは納得ができず、自分の将来の可能性をより広げることができると考えた普通高校を第一志望に定め、その目標を達成することができました。今では高校1年生の化学の用語も、意味を理解して覚え、定期テストに備えることができるようになってきています。
本事業の木曜日の教室はあえて人の出入りが多い「ブックカフェ」を会場としています。それは、近所の日本人がふらっと寄って、偶然にクルド難民の子どもと出くわし、会話し、宿題を見てあげる、といった場になることを願ってのことです。ある小学校6年生の子どもは、そのブックカフェの教室に長時間にわたって滞在し、勉強をしています。やってきた大人たちと喋ることは、日本語の発話の自然な練習の場ともなっています。また、両親は日本語がほとんどできないため宿題をみてもらうことができませんが、彼女はブックカフェで出会う大人たちに教えてもらうことで、学校の勉強も遅れをとらずに理解することができています。自習用ノートには社会や理科の難しい言葉を並べて積極的に学ぶ姿も見られます。(添付の写真をご参照ください)。でも、この教室で学んでいるのはこの子ども本人だけではありません。カフェのお客さんである日本人の近隣住民の方々が、「クルド人とは?」「難民とは?」「入管法とは?」といった、普段の生活ではおよそ考えることのないテーマに、生で触れて考えることができます。その学びは文献やメディアから得られるものとは異なる、よりリアルなものになります。クルド人は昨今、ヘイトスピーチのターゲットとされることが増えていますが、一緒に勉強をしながらおしゃべりをした、名前も顔も声も好きなものも全部知っているあの子、というリアルさは、偏見や差別を乗り越えさせてくれる力をもっているはずです。日本の、埼玉県川口市の地域社会が、多文化共生社会へと成長していくために、子どもたちから大切なことを教えてもらっていることもまた、本事業の成果だと考えています。
事業を実施する中で見えてきた課題と今後の取り組み
今年8月4日、法務大臣は日本で生まれ育った在留資格のない(仮放免者等の)外国人の子どもとその家族については、一定の条件を満たせば正規の在留資格を付与する措置を取ると発表しました。今後は、在留資格のないクルド人についても、「日本生まれ」の子どもとその家族(兄・姉も含まれる可能性があり)に限っては日本に定住できることになると考えられます。
これまでは、いくら高校・大学に進学しても、在留資格が無ければ就労の許可が下りず、結局就職できないまま生きていくことになるという「未来の見えなさ」が、進路に悩む中学生・高校生の学習意欲を蝕んできました。しかし、このたび在留資格・就労許可が得られる道が開けたことで、高等教育機関への進学を目指すクルド人難民の生徒が増えていくことにつながると考えられます。ただし、すぐに家庭の経済状況が上向くかどうかは分かりません。日本語のできない保護者が安定した収入を得られる仕事にすぐ就くことができる保証はないためです。それゆえ、進学塾や予備校にすぐ通い始めることはあまり現実的ではありません。「困窮世帯の子ども」であり、「日本語での学習に躓きがある外国ルーツの生徒」であることには変わりなく、他の外国ルーツの子どもたちと同様に、無償または廉価の学習支援の機会が必要とされる状況はこれからも長く続くと思われます。家計の状況を問わず学びの機会が保障される環境を整えていくことは、これまでにも増して必要であると考えています。
そして、幼稚園・保育園に通っていない「不就園児」「無園児」と言われる子どもたちの教育も課題として見えてきています。本事業における学習者の受け入れは小学生以上を想定していますが、何名か、幼稚園・保育園に通っていない幼児も参加していました。日本語は全く分からず、じっと座っていることもできません。日本で集団生活を送った経験がゼロであるためです。そのまま翌年には地域の小学校へと入学することになりますが、始めから大きな言葉の壁、小1の壁にぶつかることになります。こうした子どもたちのための就学準備教室「プレスクール」の必要性も見えてきました。今年から来年にかけて、試験的なプレスクール様の取り組みを始めようと考えています。うまくニーズとマッチしたプログラムが作れそうであることが確認できたら、大きく展開をしていく計画です。
助成決定した活動を報告したSNSやホームページのURL
https://metanoia.or.jp/3484/
https://twitter.com/takuji85/status/1660623648149889025
寄付してくれた人へのメッセージ
皆さまが下さった温かいご寄付が、子どもたちの学びを大きな後押しとなっています。希望する学校に入ったり、言葉が通じるようになって友だちができたり、子どもの世界は皆さまのお陰で大きく広がっています。本当にありがとうございます。
受付日時